22.2. ゲートウェイとルート

原作: Coranth Gryphon . 1995 年 10 月 6 日.

訳: 前田 幸範 . 1996 年 9 月 6 日.

あるマシンが他のマシンをみつけることができるようにするには、 あるマシンから他のマシンへ、 どのようにたどり着くかを適切に記述するための仕組みが必要です。 この仕組みをルーティングと呼びます。 “ルート(経路)”は “destination (目的地)” と “gateway (ゲートウェイ)” の 2 つのアドレスの組で定義します。 あなたが destination へアクセスしようとした場合、 gateway を通って送られることをこのペアは示しています。 destination には個々のホスト、 サブネット、 “デフォルト” の 3つの タイプがあります。 “デフォルトルート” は他への経路が適用できない 場合に使われます。 のちほどデフォルトルートについて少し述べることに するとして、 ここでは、 個々のホスト、 インタフェース (“リンク” とも呼ばれます)、 イーサネットハードウェアアドレスという 3つのタイ プのゲートウェイについて説明します。

22.2.1. 例

以下に示す netstat -r の出力の例を使って、 ルーティン グがいろいろと異なっている様子を説明することにします。

Destination      Gateway            Flags     Refs     Use     Netif Expire

default          outside-gw         UGSc       37      418      ppp0
localhost        localhost          UH          0      181       lo0
test0            0:e0:b5:36:cf:4f   UHLW        5    63288       ed0     77
10.20.30.255     link#1             UHLW        1     2421
foobar.com       link#1             UC          0        0
host1            0:e0:a8:37:8:1e    UHLW        3     4601       lo0
host2            0:e0:a8:37:8:1e    UHLW        0        5       lo0 =>
host2.foobar.com link#1             UC          0        0
224              link#1	            UC          0        0

最初の2行はデフォルトルート(次の節で詳しく説明します)と、 localhostへの経路を示しています。

localhostのためのインタフェース (Netifの欄) はlo0で、 これはループバックデバイスとして知られています。 結局のところ戻るだけなので、 この destinationへのすべてのトラフィックが 内部的に処理されるのであって、 LAN を経由して送られるのではありません。

次の行では 0:e0:... というアドレスに注目しましょう。 これはイーサネットハードウェアアドレスです。 FreeBSDは自動的に ローカルなイーサネット上の任意のホスト (この例ではtest0) を見つけ、 イーサネットインタフェース ed0 の所にそのホストへの経路を直接つけ加えます。 タイムアウト時間 (Expireの 欄) も経路のタイプと結びついており、 指定された時間が経過しても応 答がないときに使用します。 この場合、 経路情報は自動的に削除されま す。 これらのホストは、 RIP(Routing Information Protocol) という、 最短パスの判定に基づいてローカルホストへの経路を 決定する仕組みを利用することで認識されます。

更に、 FreeBSDではローカルサブネット (10.20.30.25510.20.30 というサブネットに対するブロードキャストアドレスで、 foobar.com はこのサブネットに結びつけられているドメイン名) への経路情報も加えることができます。 link#1というのは、 このマシンの最初のイーサネットカードのことをさします。 これら については、 何も追加インタフェースが指定されていないことに気づく でしょう。

これらの2つのグループ(ローカルネットワークホストと ローカルサブネット) の両方とも、 routed と呼ばれるデーモンによって自動的に経路が設定されます。 routed を動かさなければ、 静的に定義した (つまり具体的に設定した) 経路のみ存在することになります。

host1 の行は私たちのホストのことで、 イーサネットアドレスで示されています。 送信側のホストの場合、 FreeBSDはイーサネットインタフェースへ送るのではなく、 ループバックインタフェース (lo0)を使います。

2つあるhost2の行は、 ifconfigのエイリアス (このようなことをする理由については ethernetの章を参照してください) を使ったとき にどのようになるかを示す例です。 lo0の後にある=> は、 インタフェースが (このアドレスがローカルなホストを参照しているので) ループバックを使っているというだけでなく、 エイリアスになっていることも示しています。 このような経路はエイリアスをサポートしている ホストにのみ現れます。 ローカルネットワーク上の他のすべてのホストでは 単にlink#1となります。

最後の行 (destinationが224のサブネット) はマルチキャストで扱うものですが、 これは他の章で説明します。

他の欄については Flags について説明する必要があります。 それぞれの経路は欄に示されているように違った属性を もっています。 以下にいくつかのフラグとこれらが何を意味しているかを示します。

U Up: この経路はアクティブです。
H Host: 経路の destinationが単一のホストです。
G Gateway: この destinationへ送られると、 どこへ送れ ばよいかを明らかにして、 そのリモートシステムへ送られます。
S Static: この経路はシステムによって自動的に生成 されたのではなく、 手動で作成されました。
C Clone: マシンに接続したときにこの経路に基づく 新しい経路が作られます。 このタイプの経路は通常は ローカルネットワークで使われます。
W WasCloned: ローカルエリアネットワーク(Clone) の経路に基づいて 自動的に生成された経路であることを示します。
L Link: イーサネットハードウェアへの参照を含む 経路です。

22.2.2. デフォルトルート

ローカルシステムからリモートホストにコネクションを張る 必要がある場合、 既知のパスが存在するかどうかを確認するためにル ーティングテーブルをチェックします。 到達するためのパスを知っているサブネットの内部に リモートホストがある場合 (Cloned routes)、 システムはインタフェース から接続できるかどうかをチェックします。

知っているパスがすべて駄目だった場合でも、 システムには 最後の切り札の “デフォルト” ルートがあります。 このルートは ゲートウェイルート (普通はシステムに 1つしかありません) の特別なものです。 そして、 フラグフィールドは必ず c がマークされています。 このゲートウェイは、 LAN 内のホストにとっ て、 外部 (PPPのリンクを経由する場合や、 データラインに接続するハードウェアデバイスなど) へ直接接続するマシンすべてのためのものです。

外部に対するゲートウェイとして機能するマシンで デフォルトルートを設定する場合、 デフォルトルートはインターネットサービスプロバイダ (ISP) のサイトのゲートウェイマシンになるでしょう。

それではデフォルトルートの一例を見てみましょう。 一般的な構成を示します。


[Local2]  <--ether-->  [Local1]  <--PPP-->  [ISP-Serv]  <--ether-->  [T1-GW]
    

ホスト Local1 とホスト Local2 を PPP で ISP のターミナルサーバと接続されているあなたの サイトだとします。 ISP はサイト内にロー カルなネットワークを持っていて、 そこにはさまざまなものがあり、 あなたの接続するサーバや ISP のインターネットへの 接続点であるハードウェアデバイス (T1-GW) などがあります。

あなたのマシンのデフォルトルートは それぞれ次のようになります。

host default gateway interface
Local2 Local1 ethernet
Local1 T1-GW PPP

“なぜ (あるいは、 どうやって) Local1 の デフォルトゲートウェイをISPのサーバでなく T1-GWにセットするのか” という質問がよくあります。

コネクションのローカルの側については、 PPPのインタフェースは ISPのローカルネットワーク上のアドレスを用いているため、 ISPのローカルネットワーク上のすべてのマシンへの経路は 自動的に生成されています。 つまり、 あなたのマシンは、 どのようにT1-GW まで届くかという経路を既に知っていることになりますから、 ISPサーバに媒介的なトラフィックをかける必要はありません。

最後になりましたが、 一般的にローカルネットワークでは ...1 というアドレスをゲートウェイアドレスとして使います。 ですから (同じ例を用います)、 あなたのclass-Cのアドレス空間が 10.20.30で ISPが 10.9.9を用いている場合、 デフォルトルートは次のようになります。


Local2 (10.20.30.2)             -->  Local1 (10.20.30.1)
Local1 (10.20.30.1, 10.9.9.30)  -->  T1-GW (10.9.9.1)
      

22.2.3. マルチホームホスト

ここで扱うべき他のタイプの設定があります。 それは2つの異なるネットワークにまたがるホストです。 技術的にはゲートウェイとして機能するマシン (上 の例では PPPコネクションを用いています) はマルチホームホストで す。 しかし実際にはこの言葉は、 2つのローカルエリアネットワーク上のサ イトであるマシンを指す言葉としてのみ使われます。

2枚のイーサネットカードを持つマシンが、 別のサブネット 上にそれぞれアドレスを持っている場合があります。 あるいは、 イーサネットカードを1枚持っているマシンで、 ifconfigのエイリアスを使っているかもしれません。 物理的に分かれている2つのイーサネットのネットワークが使われて いるならば前者が用いられます。 後者は、 物理的には1つのネットワ ークセグメントで、 論理的には分かれている 2つのサブネットとする 場合に用いられます。

どちらにしても、 このマシンがお互いのサブネットへのゲートウェイ (inbound route) として定義されていることが分かるように、 おのお ののサブネットでルーティングテーブルを設定します。 このマシンが 2 つのサブネットの間のブリッジとして動作するという構成は、 パケ ットのフィルタリングを実装する必要がある場合や、 一方向または双 方向のファイアウォールを利用したセキュリティを構築する場合によ く用いられます。

22.2.4. ルーティングの伝播

すでに外部との経路をどのように定義したらよいかは 説明しました。 しかし外部から私たちのマシンをどのようにして 見つけるのかについては説明していません。

ある特定のアドレス空間 (この例では class-C のサブネット) におけるすべてのトラフィックが、 到着したパケットを内部で転送するネ ットワーク上の特定のホストに送られるようにルーティングテーブル を設定することができるのは分かっています。

あなたのサイトにアドレス空間を割り当てる場合、 あなたのサブネットへのすべてのトラフィックがすべて PPPリンクを通じてサイトに送 ってくるようにサービスプロバイダはルーティングテーブルを設定し ます。 しかし、 国境の向こう側のサイトはどのようにしてあなたの ISPへ送ることを知るのでしょうか?

割り当てられているすべてのアドレス空間の経路を維持する (分散している DNS 情報とよく似た) システムがあり、 そのインターネット バックボーンへの接続点を定義しています。 “バックボーン” とは国を越え、 世界中のインターネットのトラフィックを運ぶ主要 な信用できる幹線のことです。 どのバックボーンマシンも、 あるネットワークから特定のバックボーンのマシンへ 向かうトラフィックと、 そのバックボーンのマシンからあなたのネットワークに届くサービス プロバイダまでのチェーンのマスタテーブルのコピーを持っていま す。

あなたのサイトが接続(プロバイダからみて内側にある ことになります) したということを、 プロバイダからバックボー ンサイトへ通知することはプロバイダの仕事です。 これが経 路の伝搬です。

22.2.5. トラブルシューティング

ルーティングの伝搬に問題が生じて、 いくつかのサイトが 接続をおこなうことができなくなることがあります。 ルーティングがどこでおかしくなっているかを明らかにするのに 最も有効なコマンドはおそらく traceroute(8) コマンドでしょ う。 このコマンドは、 あなたがリモートマシンに対して接続をおこなう ことができない(例えば ping(8) に失敗するような場合) 場合も、 同じように有効です。

traceroute(8) コマンドは、 接続を試みているリモートホストを引数にして実行します。 試みているパスの経由するゲートウェイホストを表示し、 最終的には目的のホストにたどり着くか、 コネクションの欠如によって終ってしまうかのどちら かになります。

より詳しい情報は、 traceroute(8) のマニュアルページをみてください。

本文書、および他の文書は ftp://ftp.FreeBSD.org/pub/FreeBSD/doc/ からダウンロードできます。

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